AI(Claude)活用開発会社の選び方

システム保守契約とSLAの決め方|月額に含む作業範囲の線引きと引き継ぎ条件

2026-10-03 読了12分 9PV
システム保守契約とSLAの決め方|月額に含む作業範囲の線引きと引き継ぎ条件

システムを納品してもらった後、毎月かかり続けるのが保守運用費です。ところが見積書には「月額保守 30,000円」としか書かれていないことが多く、その3万円で何をしてもらえるのかが分からないまま契約している——という状態は、中小企業ではかなり一般的です。実際、「不具合の修正は含まれるが、画面の項目追加は別料金だった」「障害の連絡をしたが、返信が3日後だった」といった食い違いは、契約時に範囲と応答基準を決めていなかったことが原因で起きます。本記事では、保守と運用の違い、月額費用に含まれる作業の線引き、相場の考え方、そしてSLA(サービス品質の取り決め)で決めておくべき項目を整理します。

「保守」と「運用」は別の仕事である

保守は直す・変える、運用は動かし続ける

まず用語を分けておきます。混ざったまま契約すると、範囲の議論ができなくなります。

区分 主な作業 発生タイミング
保守 不具合修正・仕様変更・機能追加 不定期
運用 監視・バックアップ・更新適用 常時・定期
ヘルプデスク 操作の問い合わせ対応 不定期
インフラ サーバー・ドメイン・証明書 常時・年次

「月額保守」という名称の契約に、実際は運用とヘルプデスクが含まれていることも、逆に保守しか含まれていないこともあります。名称ではなく、作業リストで確認するのが唯一の方法です。

インフラ費用は保守費とは別に発生する

サーバー代・ドメイン代・SSL証明書代は、開発会社への保守費とは別のコストです。小規模な業務システムであれば、クラウドサーバーで月2,000〜10,000円程度が目安になります。AIを組み込んだシステムではこれに加えて、AnthropicやOpenAIへ支払うAPI利用料が発生します。こちらは利用量に応じた実費で、小規模なツールなら月0.5〜2万円程度が目安です。

見積もりを比較するときは、「保守費+インフラ費+API実費」の合計で並べてください。保守費だけを比べると、サーバー代を自社持ちにしている会社が安く見えてしまいます。

月額保守に含まれるもの・含まれないもの

一般的な線引き

会社によって差がありますが、標準的な分け方は次のようになります。契約前にこの表を見せて「御社の場合はどうなりますか」と確認するのが確実です。

作業 一般的な扱い
納品物の不具合修正 含む(無償)
サーバー監視・障害対応 含む
バックアップと復旧 含む
セキュリティ更新の適用 含む
操作方法の問い合わせ 含む(回数制限あり)
文言・項目名の変更 軽微なら含む
画面や帳票の項目追加 別途見積もり
新機能の開発 別途見積もり
他システムとの新規連携 別途見積もり
大幅なデザイン変更 別途見積もり

境界線でいちばん揉めるのが「軽微な変更」の定義です。ここは金額ではなく時間で決めるのが実務的です。「月2時間までの作業は月額に含む、それを超える分は事前に見積もりを提示」といった形にしておけば、その都度の判断が不要になります。

不具合と仕様変更の切り分け

もうひとつの争点が、「これは不具合か、仕様変更か」です。原則は次のとおりです。

  • 不具合:合意した仕様どおりに動いていない状態。無償で修正されるべきもの
  • 仕様変更:仕様どおりに動いているが、業務の都合で変えたいもの。有償

この判断ができるのは、合意した仕様が文書で残っている場合だけです。設計書や画面定義が納品物に含まれているかを、開発の契約時点で確認しておいてください。ここが曖昧だと、納品後のすべての要望が「仕様変更です」と扱われかねません。

保守費用の相場と、その決まり方

初期費用に対する比率で考える

保守費の見積もりには、業界的におおよその目安があります。年間の保守費が初期開発費の10〜20%に収まる範囲が一般的で、15%前後が中心です。初期費用60万円のシステムであれば、年間6〜12万円、月額5,000〜10,000円という計算になります。

費用の内訳や相場そのものの考え方についてはAI開発の保守運用費の考え方|継続コストの内訳と相場感もあわせてご覧ください。本記事では、そこから一歩進んで「契約と取り決め」の側面を扱います。

これを大きく超える場合は、24時間監視・障害時の駆けつけ対応・定期的な改修枠が含まれているなど、相応の理由があるはずです。理由を聞いて納得できるなら問題ありません。

規模別の月額目安

当社(アサヒリンクス)でお出ししている構成別の目安を掲載します。いずれも任意契約で、サーバー監視・セキュリティ対応・小さな改修を含む前提です。

システム構成 初期費用 月額保守
FAQボット・社内RAG 15〜25万円 0.8〜3万円
議事録・書類自動化 25〜50万円 0.8〜3万円
業務・顧客管理システム 50〜100万円 1.5万円〜
予約・会員・決済 60〜110万円 2万円〜
大規模・複合システム 100万円〜 要相談

たとえば業務・顧客管理システムを初期70万円で構築し、月額1.5万円の保守を1年間契約した場合、1年目の総額は約88万円、機能追加を想定して5〜15万円を見込むと約93〜103万円という計算になります。初期費用だけでなく、1年目・3年目の総額で判断するのが失敗の少ない考え方です。

AI組み込みシステム特有の継続コスト

AIを使ったシステムには、従来の業務システムにはなかった継続的な作業が発生します。ここを見込んでいない保守見積もりは、後から負担が表面化します。

  • API利用料の変動:利用量が増えれば実費も増えます。上限アラートの設定を依頼しておくと安心です
  • モデルのバージョン更新対応:提供元のモデルが更新・提供終了された場合、接続先の切り替えと出力の再確認が必要になります
  • プロンプトの再チューニング:業務の変化や書式の変更に合わせて、指示文を調整する作業です
  • 出力精度の定期確認:想定パターンで出力をチェックし、劣化がないかを確認します

とくに2つ目は避けられない項目です。「モデル更新時の対応は保守に含まれますか」という質問は、AI開発の保守を比較するうえで最も差が出る問いのひとつです。

契約形態の3タイプと選び方

形態 費用 向いているケース
定額(月額) 月1〜3万円 止まると業務が困る
スポット(都度) 1.5〜2.5万円/時 年数回の改修のみ
時間枠買い取り 10時間分など 改修頻度が読めない

定額契約は、障害時に優先的に対応してもらえるのが最大の価値です。スポット契約は安く見えますが、依頼した時点で開発会社の別案件が進行中であれば、着手が数週間先になることがあります。業務が止まると困るシステムかどうかが、選択の基準になります。

3つ目の時間枠買い取りは、中小企業と相性の良い折衷案です。年間10時間分を先に購入し、必要なときに消費していく形にすれば、使わない月の費用を抑えつつ、優先対応の枠も確保できます。

SLAで決めておくべき5項目

①対応時間帯と初動時間

「平日9〜18時、営業時間内の連絡は原則当日中に一次返信」といった形で明文化します。24時間365日対応を求めると費用は跳ね上がるため、自社の業務時間に合わせるのが現実的です。夜間や休日に障害が起きた場合、翌営業日対応で問題ないのかどうかを、業務側で決めておいてください。

②障害のレベル分けと目標時間

すべての不具合を同じ優先度で扱うと、費用も対応も無理が出ます。3段階に分けるのが標準的です。

レベル 状態 目標対応
緊急 システム全体が停止 当日中に暫定復旧
重要 一部機能が使えない 2〜3営業日で修正
通常 表示崩れ・軽微な誤り 1〜2週間で修正

ここで大切なのは、「必ず◯時間以内に直す」という約束を求めないことです。原因が判明していない段階で復旧時間を確約させると、その保険料が月額に上乗せされます。一次返信までの時間と暫定対応の目標を決めるほうが、実効性があります。

③含まれる作業量の上限

前述のとおり「月◯時間まで」の形で決めます。使わなかった時間を翌月に繰り越せるかどうかも、あわせて確認しておくと使い勝手が変わります。

④報告の頻度と形式

月次でメール1通の稼働報告があるだけで、運用の安心感はかなり変わります。バックアップが取得できているか、エラーが発生していないか、APIの利用量はどの程度か。この程度の内容で十分です。報告が一切ない契約は、何もなければ気づきませんが、何かあったときに発覚が遅れます。

⑤契約終了時の引き継ぎ条件

見落とされがちですが、最も重要な項目かもしれません。保守契約を終了する、あるいは別の会社へ移管する場合に、次のものを受け取れるかどうかを契約書に明記してください。

  • ソースコード一式と、その利用・改変の権利
  • データベースのバックアップ(エクスポート形式)
  • サーバーやドメインの管理権限
  • 設計書・画面定義・運用手順書

ここが確保できていれば、保守会社の変更はいつでも選択肢に入ります。逆に押さえられていないと、条件が悪くても継続せざるを得ない状況になります。

保守契約を結ばないという選択はありか

結論としては、システムの性質によります。判断の目安を挙げます。

  • 保守契約を推奨:日次業務で使う/外部の顧客が触る/決済や個人情報を扱う/止まると売上に直結する
  • スポットでも可:社内の一部メンバーが補助的に使う/止まっても手作業に戻せる/データが少なく復旧が容易

ただし保守契約なしを選ぶ場合でも、サーバーの自動バックアップとセキュリティ更新だけは何らかの形で回してください。この2つを放置したシステムは、1〜2年で必ず問題が起きます。実際、長く放置された環境ではプログラムの動作環境そのものが古くなり、いざ改修しようとした時点で作り直しに近い費用がかかるケースが出てきます。

保守会社を比較するときの確認リスト

既存システムの保守を別の会社に依頼する、あるいは新規開発とあわせて保守を検討する場合、次の質問をそのまま各社に投げてみてください。

1. 月額に含まれる作業と、含まれない作業の一覧をください
2. 「軽微な変更」は月あたり何時間までを想定していますか
3. 対応時間帯と、一次返信までの目安時間を教えてください
4. 障害レベルの区分と、それぞれの目標対応時間はありますか
5. 月次の稼働報告はありますか。サンプルを見せてください
6. サーバー費用・API利用料は保守費に含まれますか
7. AIモデルの更新時の対応は保守範囲に含まれますか
8. 契約終了時、ソースコードとデータは受け取れますか
9. 担当者は固定ですか。不在時の体制はどうなりますか
10. 契約期間と、途中解約の条件を教えてください

10項目すべてに具体的な回答が返ってくる会社であれば、保守の体制が整っていると考えて差し支えありません。回答が「都度対応します」に終始する場合は、体制がまだ確立していない可能性があります。

実務でよくいただく3つの相談

「開発した会社と連絡が取れなくなった」

担当者の退職や事業の縮小によって、開発を依頼した会社との連絡が途絶えてしまうケースがあります。この状態で最初にやるべきことは、システムの改修ではなく手元にある資産の確認です。サーバーの管理画面にログインできるか、ドメインの管理権限は自社にあるか、データベースのバックアップを取り出せるか。この3点が押さえられていれば、別の会社への移管は現実的に進められます。

逆に、サーバーが開発会社の契約名義になっていて管理権限がない場合は、移管の難易度が一段上がります。契約が生きているうちに、権限の所在だけは確認しておくことをおすすめします。

「保守費の値上げを打診された」

数年に一度、保守費の見直しを提案されることがあります。判断材料になるのは、値上げ幅そのものより理由の中身です。サーバーの費用が上がった、対応範囲が当初想定より広がっている、セキュリティ要件が増えたといった説明があれば、内容に応じた妥当な見直しである可能性が高いといえます。

このとき「作業範囲を減らして現状の金額に据え置く」という選択肢も相談してみてください。たとえば月次報告を四半期ごとに変える、軽微改修の枠を月2時間から1時間に減らすなど、費用と範囲をセットで調整できることは少なくありません。

「使っていない機能の分まで払っている気がする」

保守費は機能の数ではなく、システムを安全に動かし続ける手間に対して発生します。そのため機能を使っていなくても費用は下がらないのが原則です。ただし、明らかに使われていない機能があるなら、それを整理して構成をシンプルにすることで、結果的に保守の手間が減り、費用の見直しにつながることはあります。

年に一度、開発会社と一緒に「実際に使われている機能・使われていない機能」を棚卸しする時間を取ると、無駄な費用と、逆に不足している機能の両方が見えてきます。

まとめ

保守運用費は、金額の高低ではなく「何がどこまで含まれるか」で比較する費目です。要点を整理します。

  • 保守(直す・変える)と運用(動かし続ける)は別の作業。契約名称ではなく作業リストで確認する
  • 比較は「保守費+インフラ費+API実費」の合計で行う
  • 年間保守費は初期開発費の10〜20%(中心は15%前後)が一般的な目安
  • 軽微な変更の範囲は金額ではなく「月◯時間まで」と時間で決めると揉めにくい
  • AI組み込みシステムでは、モデル更新対応が保守に含まれるかが最大の差になる
  • SLAでは対応時間帯・障害レベル・作業量上限・報告頻度・引き継ぎ条件の5点を決める
  • 契約終了時にソースコード・データ・管理権限を受け取れるかを必ず明記しておく

アサヒリンクスでは、月額保守を任意契約とし、サーバー監視・セキュリティ対応・小さな改修を含む形でご提供しています。他社で開発されたシステムの保守引き継ぎのご相談も承っていますので、現在の契約内容に不安がある場合はお気軽にご相談ください。

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